岐阜県瑞浪市 大湫町(おおくてちょう)の「湫」
は、「水たまり」とか「水草が生えている湿地」という意味で、大湫は標高500mの湿地の周辺にできた集落です。
この湿地の淵には
樹齢670年と言われる巨大な杉が自生し、2020年6月の大雨で、残念ながらこの大杉が倒れてしまったのは記憶に新しい出来事です。
ところで
この樹齢670年の杉の木を育んだ大湫盆地は、日本でも珍しい過去30万年分の歴史がわかる地層を持った貴重な土地なのをご存知でしょうか?
https://www.jstage.jst.go.jp/article/tga/62/4/62_195/_article/-char/ja/
はるか数十万年前
標高600mの山頂付近にできた深い窪地は、気の遠くなるような長い年月をかけて、極薄の堆積物を幾重にも積層させ、山水を含みながら深さ何十メートルもの底なしの沼地を作りました。
700年程前
その淵より数メートル高い山際の絶妙な位置に実生した杉は、地下の肥沃な土と交る水脈を探り当て、必要なものを吸い上げ、大気へと酸素を放出し続けながら670年もの長い時を生きました。
屋久島の屋久杉
を見ても分かるように、杉は環境が良ければ1000年以上生きるそうです。ただ、杉は根が浅いので、その巨木を育てそして支えられるような環境が必要です。屋久島の杉は、モンスーン地域の豊富な雨による潤沢な水分を吸い上げどんどん育ち、周辺の木々も同じぐらいの高さなので風雨に影響される事もあまりありません。
大湫の大杉の環境
はというと、周囲を低い山に囲まれた盆地の端で背後に崖地を背負い大きな風雨も来ない温暖な場所であったと考えられます。この盆地に流入する河川はありませんが、根の深さの程よい地層に山からの地下水が十分に供給されていたと考えられます。
昔は蛍もいた大湫盆地
は、殆どが田園です。今は現代的な農法で薬物の空中散布や枯葉剤の散布もありますので、田園の中央を縦断する水路に蛍を見ることはありません。
倒れた大杉
は内部の空洞化も進んでいたようです。
恐らく地盤への農薬の蓄積もあったかもしれませんし、水源の枯渇だったのかもしれません。
何らかの原因で根は弱り、その巨体を支える事も既に限界だったのではないでしょうか。
原因はともかくとして、
重要なのは
“大湫には杉を千年以上育てる良い環境があった” という事です。
正に身土不二ですね。
身土不二とは、「私たちの身体は私たちが食べたもので出来ている」という、仏教に伝わる用語です。
人も同じく、穏やかで、健康的で美味しいものを食べ、伸び伸びと暮らせる環境は大切です。
病気になったり、引きこもったりというのも環境や食生活が大きく影響します。
もし今の生活に
居心地の悪さや、自分のいる場所はここでは無いとか、自分をごまかしているような何か違和感を感じているならば、大湫の杉がなぜ何百年も生きたかを考えてみると、その対極に手掛かりがあるような気がします。
私たちにできる事は
自分の暮らしを見つめ直し、住まい方やライフスタイルや環境が、自分に合っているのかどうか確認してみることです。
そして、身にまとってきたこの重くるしさから、窮屈になった部分を取り除いてみてください。
重から窮を引く
10から9を引く
そうすると忘れかけていたシンプルな、本当の自分を思い出せるかも知れません。